あれはまだ大学生になりたての頃。私は飲食店でアルバイトを始めたのだが、そこで出会ったのが初めて付き合った彼女である。
彼女はその店のマネージャーをやっていて、私よりも7歳も年上の社会人。まだ高校生気分の抜けない自分から見たら、今までに接したことがない別世界のオトナの女性という印象で、何とも言えない大人の色気も漂わせていた。
シフトは2人~3人体制で、私は彼女と組んで働くことが多かった。そんなある日のこと、仕事終わってふと時計を見ると、もう午前0時半近い。終電の時間もあるので急いで身支度をしていると、彼女が「車で家まで送ってあげる」と声をかけてくれたのである。
私は特に深く考えずにOKした。
そして2人で車に乗り込んで帰る途中、人けのない道端に入ると彼女が急にクルマを停めたのである。で、「好き」と言って顔を近づけてきたのだ。
でも私とは年が離れている。それにまだ一人前に仕事もできない自分とマネージャーという立場の違いもある。
恋愛経験のない私はドキマギしながら、そんな言い訳のようなことを必死でしゃべっていた記憶があるが、マネージャーは「そんなこと関係ない。女として君を好きになった。我慢できない」と私の言葉をさえぎった…。
今考えると、私は本当にウブな女性のようで、むしろ彼女の方が男性的だった。私は全てを任せた。それが彼女と付き合い始めたきっかけである。
その後2年ほど付き合った後にフラれてしまったが、私に恋愛の素晴らしさを教えてくれた女性だ。その感謝の気持ちはこれからも忘れないだろう。
今でもあの幸せな記憶とともに、今頃どこで何しているのだろうかと彼女を思い出すことがある。